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放課後、約束通り俺たちは肉まんを買い、コンビニの前でハフハフさせながら食べていた。
「あのさぁ、飯島。俺、ちょっとお前に言いたいことがあんだけど」
もぐもぐしながら、早崎が言う。
「なに?」
「俺ね、実はお前が好きなんだ」
肉まんがのどに詰まった。激しくせき込むと、早崎はあわてて俺の背中をばしばしと叩く。鼻水、涙、かみ砕いた肉まんを一通り出したところで、なんとかおさまった俺は、目を見開いて早崎を見る。
「あ、やっぱり引くよな」
早崎は、悲し気に笑って頭を掻く。そして、「実はさぁ」と語り始めた。
「俺、昨日まで時滑りしてたんだよね。けっこう滑っちゃってさぁ、救出まで一週間もかかって、ほんと戻れないかと思った。そしたら、その時層で、お前が女だったわけ。俺、一生早崎望に会えないのかも、って思ったわけよ。だから戻れた今、後悔しないように、気持ち伝えとこうと思ったの。キモくてごめん」
「1.592653」
俺の言葉に、「はっ!?」と早崎は振り向く。
「なんで、俺が滑った時層落差数値知ってんの?」
「だって俺も、時滑りしてたんだもん」
お互い、「え?」「え?」を十回ずつくらい繰り返したところで、顔を真っ赤にした早崎は、「じゃあ、昨日、俺を呼び出した飯島はお前だったの!?」
俺は、やけっぱちになって叫ぶ。
「そうだよ! ついでに、断られて絶望したよ!」
「だって俺は、お前が、男の飯島望が好きなんだよ!」
まるで全身の血の流れが逆流したような気分になった途端、早崎に抱きしめられていた。
「えっと、これは……」
「感激のハグ」
なんと言ったらいいかわからず、とにかく心臓がどくどく言って、俺は赤面しながらようやく「そう……」と言う。
また唐突に、早崎は俺を腕の長さの分だけ離すと、「じゃあ、これって両想いってことでいいんだよな!?」と念を押す。
すぐには答えられずに硬直していると、「そうだよな!?」と早崎の顔が近づいてくる。俺は、必死になってぶんぶんと頷くと、それを止めるように早崎は俺の顔を両手で包み込んだ。それで、早崎が次にどうするつもりかわかってしまう。
「待って、早崎、ここ人目が……」
「うるさい」
そう言うや否や、俺のくちびるは、早崎に奪われていた。
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