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飯島望。望と書いて、のぞみ。これが、この時層での名前。幸いなことに、俺の本名はのぞむで、読みが違うだけで字は一緒。しかも、通っている高校も一緒だった。
通学しながら、深呼吸をして、俺はのぞみ、と自分に言い聞かせる。
ここは、まちがいなくUTLWなのだから。それなら、TLPが俺を探し出し、救出してくれるまでは、のぞみとしていきなければならない。
UTLW、それは、unknown time layer world、つまり、時層という認識自体がない時層世界。
これは、当たり障りのない二つの質問で判明できる。
一つは、レオポルト・インフェルトについて認知の有無。彼は、この世界はいくつもの時層が積み重なる並行世界線で成り立っており、今まで、一次元だと思われていた時間次元が、二次元であることを発見した。ゆえに、時間移動に二つの新しい概念が生まれた。一つは、同時層内での過去や未来への時間移動。これを、俺の世界では「時間(タイム)旅行(トラベル)」と呼ぶ。もう一つは、異時層での時間移動、「時滑り(タイムスリップ)」。つまり、後者が俺の身にまさに起こっている現象ってわけ。
この発見は第二次世界大戦下に行われ、対戦国は互いに時間旅行による歴史改変での戦勝を目論んだ。
よって、二つ目の質問が、1945年8月6日と9日に行われたことは? となる。それは、まずアメリカ、次に旧ソ連よる初の時間旅行だ。
理論上は可能なはずだった。だが失敗し、現在でも成功例は報告されていない。
それから、第二次世界大戦が終焉を迎える9月2日までのたった一か月足らずに、世界中において行方不明者が相次いだ。その数、およそ世界中で数万人。
インフェルト率いる研究チームは、この世界中の行方不明事件と、時間旅行の失敗の関連付けについて研究を進めた。
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