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A「普段、紛争地域の写真ばかり撮ってるとね。たまに、こうした自然の綺麗な景色を撮りたくなるんだ」
B「そうすることで、心のバランスをとってるのかい?」
A「それもあるのかもね。だって、わたしが生きてきた世界とは真逆の世界だから。真実を伝えたい気持ちは、勿論いつもある。でも、ずっとそこの場所に浸かり続けているとね。元々あった筈の感覚が、目の前に広がる砂漠の砂のように、時々乾いて干からびてく気がするんだ。良くも悪くもなじんじゃって、そこにある風景を思うように切り取ることが出来なくなる。だからわたしは今、元の感覚を取り戻す為に、こうしてここでシャッターをきってる」
B「……そうかい。お前さんも、大変な仕事についたもんだなぁ……」
A「好きでやってる仕事だから、大変じゃないよ。それにここの写真、自分の感覚を取り戻す為でもあるんだろうけど、あっちの子供達にも見せてあげたいと思って撮ってる分もあるから。自分達の知らないきれいな世界を見るとね、あの子達、キラキラした瞳で笑うんだ。本当に嬉しそうに」
B「そりゃあ良いね。お前さんの行いは、美しいことだ」
A「きれいな世界があるって知ってても、ただ、それを切り取って、写真にして見せることだけしか出来ないんだけどね」
B「いいや。きれいな世界を知るのと知らんのとでは、それだけで大きな差があるというもんさ。心が洗われる瞬間があるということは、それだけで癒しになるというものなんだよ。わしも、それで昔は随分と救われた」
A「やっぱりそうだよね。この目の前に広がる景色をそのまま持っていくなんて、土台無理な話なんだろうけど。でも写真でなら、こんなちっぽけなわたしでもきれいな世界を運べるから。見せてあげたいんだ。……ううん、見たいんだ。わたしが、あの子達のキラキラと輝く瞳を」
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