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ザムザは宇宙空間を長いこと漂っているが、最近見つけた太陽系第3惑星の中でも、とりわけ日本という国の知的生命体が生産しているサブカルというものが大好きで、しばしば回線をハックして電子書籍をダウンロードしたり、ウィニーで割れ厨が流した新作エロゲを落としたり、ニコニコで放送されているアニメを視聴している。それゆえに日本語を読むことはできるが、話すことは未だにできない。必要性がなかったからだ。だが今、自分は目覚めていきなり憧れの日本にやってきたようだ。是非とも、あのようなすばらしい文化を生み出した日本人と交流がしたい。ザムザは念力を使って、再び日本人の使う回線に勝手にログインした。外国人向けの日本語会話初級のテキストブックがヒットした。
課題1.外国語会話を身につける第一歩はとにもかくにも喋ること!まずは、3人のヒトと会話をしてみよう!
その課題を読み終えるのとほぼ同時、部屋のドアががちゃりと大きな音を立てて開いた。
「お兄ちゃ~ん!!!!!」
甲高いアニメ声が響く。ザムザが目を見開くと、夢にまで見た、愛らしいツインテールの典型的な妹キャラな少女が、突然ベッドに横たわる彼に突進してくるところだった。
「ぐえっ」
「もぉ~寝ぼすけなんだから、起きて起きて起きて~!」
ザムザに飛び乗るとその少女はそう言いながら彼の体を揺さぶる。これは、3日前に呼んだエロ同人誌の展開そのものではないか! この、絵から飛び出てきたような妹と、交流を深めるチャンスである。ザムザはテキストブックから簡単に発話できそうな日本語のフレーズを探し出した。
「これは、ペンです」
「えっ?」
ザムザの発言に、布団の中にもぐりこもうとしていた妹は動きを止めた。何か、通じるものがあったらしい、と思ったザムザは、更に別のフレーズを検索し、発話した。
「トムはしばしば、テニスをします」
「お、お兄ちゃん、大丈夫まだ寝ぼけてるの? 私遅刻しちゃうから先に行くね……」
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