『熱帯魚の声は聞こえない』

11/12
前へ
/13ページ
次へ
将隆は一人きりのリビングで寛いでいた。お気に入りの洋画のDVDをセットし、自分でコーヒーをドリップしてカップに注ぐ。 一体、裕子はいつ帰ってくるのだ。連絡すら寄越さない。勝手に人を振り回して、どういうつもりだ。反省して帰ってくるなら許してやらなくもないが。 そんな事を考えていたら、お気に入りのシーンを見逃していた。こういう風に心を乱されるのが嫌なのだ。 裕子が帰ったら、しばらく無視でも決め込んでやるか。反省具合を確かめるのにちょうど良いだろう。 そんな風に考えながら、将隆はコーヒーを味わっていた。いつもより苦味が出てしまったようだ。入れ方のせいなのか、それとも自身の精神状態が影響しているのか。 全く、裕子のせいで、とんだ休日だ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加