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将隆と裕子
「ねえねえ、こんな小説書いてみたんだけど。“そして空を見上げた。”がテーマなんだ。」
裕子がいつも小説を投稿しているサイトを将隆に見せた。裕子は読書好きが高じて、今は小説を書くことが趣味になっている。
「うん?『熱帯魚の声は聞こえない』か。ふーん...」
そう言いながら読みはじめる将隆。裕子は、小説を書くといつも投稿前に将隆に読んでもらっていた。一番最初の読者だ。
今回は何て言うだろう?
「おい。これ俺のつもり?設定が10歳程上だけど?」
「もちろん!名前も同じでしょ?どう?」
「どうって、俺はこんなパワハラ男じゃないぞ!」
「うーん、それはどうかな?バッチリ予備軍だと思うな。10年後の未来予想図、的な?」
「それに、裕子は何これ?裕子がこんなに大人しい訳ないだろ?自分だけズルくない?」
「それは、作者の特権ってやつだよ。」
「コラ!」
捕まえようとする将隆の攻撃をかわし、裕子はリビングを横切り窓の側まで逃げた。そして、秋晴れの空を見上げた。
「ねえ!いい天気だよ!出掛けようよ!」
〈end〉
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