金星とコイン

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 僕の目の前にある折りたたみ式の台の上には、繊細な細工が施された銀製のアクセサリーが並んでいる。  一員として入れて貰っているキャラバンの中で、こう言ったアクセサリーの扱いに一番慣れているのは僕だ。だから、銀細工などの仕入れと販売は僕に一任されている。  今日の売上を計算して、いまいち振るわなかったなと思わず口を尖らせる。それから、お金を入れた財布の中から銅貨を一枚取りだして親指で弾いた。澄んだ音を立てて銅貨が宙を舞う。それを視線で追うように空を見上げる。西の空に金星が見えた。  コインが頂点から少し落ちたところで手で掴む。 「明日はもっと上手く売る」  そう呟いて、キャラバンのみんなが泊まっている宿に向かった。
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