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extra edtion -draw in the night-
透明なキャンバスにプルシャンブルーを零したら、「夜」になった。
気紛れで少しのサンライズイエローとペイルブルーを落としたら、今度は「朝」がやって来た。
もう少し青を強くして、気が変わったら紫を足す。そうしてまた、「夜」色にした。
筆に水を付ける。そうしてピッとキャンバスに向かって何度か振ると、小さな点々がいくつか出来てそれがいつしか「星」になった。
それから白にも近いシアンで丸を描く。そうしたらそれは辺り一面をぼんやりと照らして、やがて「月」になった。
朝に昇る白い大きな丸とは随分違って、こちらの光は幾分柔らかく優しいものだ。
その空の下に、二つの影を描いた。
並んで歩く、二つ分の。手を繋いで、出来るだけ身体を寄せ合って。
この「月」は満ち欠けはしない。ずっと丸いままで、明るく僕らを照らすだろう。
ねぇ、そうでしょう。
あまりに無防備な寝顔に向かって語りかける自身の唇は、自然と三日月のように歪んでいた。
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