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それからまた一週間。
相変わらず店は見つからない。
不思議な体験をしたのだということにして諦めればいいものを、僕は未だに探すのをやめられないでいた。
だってネクタイを貰ったままで、お礼も何も無しで…。それから…。
それから?本当に、それだけだろうか。
僕は彼に会って、何をしたいんだろう。泊めてもらったお礼と、ネクタイのお返しと…。それから…。
どうしてあの時。
また無意識に唇に手が伸びていた。
夢なら早く醒めて欲しい。もう見つけられないのならばいっそ忘れさせて欲しいのに、僕は未練がましく未だに鮮明に覚えている。
唇をなぞるのも、無意識に零れる熱い溜め息ももう何度目か分からない。
たった一晩。彼と話すのはとても楽しかったし、居心地が良かった。不可思議なものが並ぶ一階とは違って二階の彼の生活スペースはシンプルで優しい雰囲気で、そして、暖かかった。
会ったばかりのはずの僕に彼はとても優しくしてくれた。あの居心地の良さは、彼自身が作り出していたものなのかもしれない。
青年と過ごしたのは、寝る前のひと時と朝出勤するまでの数時間だけだ。ただ向かい合って食事をして、他愛の無い話をして、笑い合って。
それだけなのに。他には、あのキスの他には何も無かったのに。
彼は「これだけは許して」と言った。許してって、どういうことだろう…。分からない。分からないことばかりなのに、いや、分からないことばかりだからこそ僕は彼に。
会いたい。
「…もう一度、会いたい」
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