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天井からはたくさんの四角いランタンが吊り下げられていて、玄関にあったものと同じくぼんやりと暖かみのある光を放って部屋全体の照明の役割を果たしている。その中には星の形をしたランタンもいくつか混じっていて、遊び心があるなぁ、と思った。見つける度に少し嬉しい気分になる自分も実に単純だ。
そして部屋の真ん中にどんと置かれた大きめの机の上には、おもちゃのような雑貨が所狭しと並べられていた。
赤や青や薄いピンク色のガラスでできた花のブローチみたいなものは、角度を変えて見るとまるでオーロラのように揺らめいてランタンの光を反射する。
隣にある手の平サイズの小さなメリーゴーラウンドには金色のゼンマイが付いていて、くるくる回すとちゃんと音楽と共に動くようになっていた。面白いオルゴールだ。
流れてきた曲は「MoonRiver」。特に洋楽好きというわけでもない僕が曲名を思い出せたのは奇跡だ。
確か古い映画のワンシーンで歌われた曲。映画自体は知らないけれど、窓辺で綺麗な女優さんが弾き語るシーンだけは何故か頭に残っている。
二人の流れ者が、世界を見に旅立つんだ。この世界はまだまだ素晴らしいもので満ち溢れているのだ、と。その後の解釈は正直よく分からない。だけどその優しい音色が僕は大好きなのだ。
オルゴールの響きは決して大きな音ではなかったけれど部屋中に響き渡って、心地よく鼓膜を刺激した。この音はきっと先程挨拶をしてくれた店の人にも届いているだろう。
勝手に商品を触ってしまったことに若干の罪悪感を覚えつつ、僕はもう一度まじまじと店内を見渡した。
大きな窓の反対側にある、壁一面を覆い尽くす程立派な木製の棚。そこにずらりと並んだ小瓶の中には、色とりどりの液体が入っていた。それらはきちんとグラデーションになるように整理されていて、これまた幻想的で美しい。中に花や何かの植物が入っているものもあった。何かの薬なのか、はたまた只の観賞用なのか。
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