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満面の笑みで僕の眼前に近づいた男は思いの外背が高く、平均的な身長の僕でも彼と目線を合わせるには少し見上げる必要があった。大人びた雰囲気ではあるが、近くで見ると結構若い。
「いらっしゃいませ」
近くに来てから、もう一度囁かれる。あぁ、やはりこの声だ。
「勝手に入ってすみません。大丈夫でしたか?」
「ふふっ、大丈夫ですよ。貴方なら何時でも大歓迎です。…まさか本当に来てくれるなんて」
「へ?」
「あぁいえ、何でもありません。ここは見ての通り人通りが少なく、お客さんも中々いらっしゃらないものですから」
「はぁ、そのようですね…」
何故そんなところでお店を…なんて野暮なことは聞かないでおこう。
「それで、どうです?何かお気に召すものはございましたか?」
「そう、ですね…」
そう言われてもなぁ…。もう一度ぐるりと店内を見渡すが、やはり魔法使いの部屋みたいだなぁという感想が浮かぶのみだった。或いはちょっとファンタジーな博物館、みたいな。
「面白いものがたくさんあるんですけど、ここは何屋さんなんですか?」
「そうですね…魔法使いの部屋ですかね」
「えっ」
心を読まれたのかと思って一瞬ピクリと肩が跳ねる。店主らしき青年はふふふっと楽しそうな笑みを溢した。
「なぁんてね。雑貨屋みたいなものですよ。ご覧の通りちょっとおかしなものが多いですけれど」
そう言って青年は案内するようにするりと自然な動作で僕の手を引き、店の中央辺りへと誘導した。ひとつふたつ、もうひとつ。僕が気になった品を手にとっては軽い説明をしてくれた。
但しどれも詳しい使用用途は分からないままだ。
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