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しおりの場所をめくってみて、恭介の胸は再びどきんと強く打った。そこにはいわゆる、ラブシーンが描かれてあったのだ。
官能小説ではないので、あまり露骨な表現はされていないが、そこそこエロい書き方がしてある。
(まさか、こんな風に抱いてくれ、っていうんじゃ……!)
はぁはぁと息の荒くなりそうな恭介に気づかないのか、気づかないふりをしているのか、瞬はひどく物憂げに、ぽつりぽつりと零し始めた。
「今夜、こんなことお願いしたのは、この本にヒントを得たからなんだけど」
「お、おう」
「実は僕、このところ不眠症に悩まされてて……トリアゾラム飲むほどになって……」
「うん」
それでね、と瞬は恭介にずいと寄り添い、手にした本の一節をなぞった。
「ここ。ここに書いてあるだろぅ? 『睡眠障害に悩まされた毎日が、嘘のようだ。エミリィは彼の胸の中で、すぐに幸せな深い眠りに落ちていった』」
「まさか、お前。セックスすれば、不眠から解放されると思ってるのか!?」
「そうだけど?」
きょろん、と素直な瞬の瞳が悩ましい。
そんな眼をされると、手を出しにくくなるじゃねぇか!
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