夢で逢いましょう

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『今夜は帰らないで』  どきん、と恭介の胸が強く打った。 「泊まってけ、って事だよな」  子どもの頃には、お泊りなど何度もしたものだ。  しかしそれは、無邪気な少年のお遊びの延長だ。何かあるはずもなく、仲良く一つのベッドにぐうぐう眠るだけだった。  だが、いまやもう二人とも成人した。立派な大人だ。そして大人の思考で捉えると、瞬の願いは途端に艶めいて聞こえる。  恭介は紙片を細かく破ると口の中に放り込み、ワインで流し込んだ。 「な、な、何言ってンだろうな!」  早とちりで恥をかいては大ごとだ。  やっぱりただのお泊りでした~、というオチを安全装置として心に刻んだ。  しかし一方で、大いなる期待もいっぱいに膨らんでいるのだ。
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