夢で逢いましょう

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『今夜、僕を抱いて』 「……ッ!」  恭介は、奇声をすんでのところで飲み込んだ。 (マジ!? 本気!? 正気!?)  紙片を光に透かしたり、水に濡らしたりして確かめた。  しかし、それ以上の文字が浮かんでくる様子はなく、いたずらにインクがにじむばかり。  バスタブに浸かって、口をもぐもぐさせながら考えた。例の紙は、やはり食べてしまったのだ。 「抱いて、っつっても、『抱っこして』程度かもしれねえ」  抱きしめて眠って、という意味かもしれない、と恭介は極めて冷静に、疑り深く解釈した。  ピュアな瞬なら、それくらいの事は考えていそうだ。  とにかく、と勢いよくバスタブから上がった。 「とにかく、不用意な期待は禁物だ!」  それだけを肝に銘じて、恭介はバスルームを出ていった。
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