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お詫びにと見せてもらった画像は、信じられないほど綺麗だった。
真っ青な空の下、雪を舞い上げて走るラッセル。
アングルとか、構図とか、そういうのを抜きにしても綺麗。表現できないくらい。
「すごい……綺麗」
「ありがとう。ただの趣味だけど、褒めてもらえると嬉しいもんだね」
照れたみたいに笑いながら、三脚から外したカメラを、大事そうに専用バッグへしまっている。
その横顔も手つきも、目が離せなくなっていた。
どうしよう。
この人のこと、もっと知りたい。仲良くなりたい。すごい人だ、ぜったい。
何か言わなくちゃ。
考える前に、声が出ていた。
「また、会えますか?」
てきぱきと機材を片付けるその人は、驚いたように手を止めた。
「鉄道好きなら、また会うかもね。そのときはよれしく」
「はいっ!よろしくお願いします!」
あとはどうやって帰ったか覚えてない。
あの日の写真は、はじめて部屋に飾った一枚になった。
その後、にわかファンだったわたしは、写真と鉄道の猛勉強をした。
そして、また雪が降り出した、新車両の試走日、あの人を見つけた。
晴れて一緒に撮影に出かける仲になったわたしたちは、撮り方や新機種について話している。
――毎日。
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