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残された手足を見て嗚咽がこみ上げてきた。手足から視線をそらすと息を止めて固く目を瞑る。
目の端から涙が出て来ると私は呟いた。
「帰りたい、 ママ パパ」
私は壁の端によるとしゃくりをあげながら泣き始める。
「ん~? 声?誰かいるの?」
またあの声が聞こえてきた。私は息を止めて隠れるように縮こまる。
鉄格子の音が開く音がするとその人物はゆっくり牢屋の中に入ってくる。
助けを求める心の声は誰にも届かない。
この場で縮こまり体を震わせていた私はすぐに見つかってしまった。
私の前に陰が重なるその頭にはやはりウサギの耳が付いていた。
「あ、ごめんなさい 許してください」
その人物と目が合い全身の体温が一気に下がる、私は許しを求め何度も謝り続ける。
混乱した頭は何も考えられず、その人物の瞳が興味の色に変わっていたことなど知る由もなかった。
「ねぇ なんで君は喋れるの?」
突然そんな言葉をかけられ私は大きく体を震わせる。理解が追いつかず
「え?」
とぼけた声を出してしまう。その人物は笑顔のまま私の前にしゃがみ込んだ。少しでも身動きするば一瞬で殺されてしまうかもしれない、そう思うとどうしても体に力が入ってしまう。
「わからないかな?どうして喋れるのって聞いてるんだけど」
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