カモミールとリンゴ

3/50
前へ
/270ページ
次へ
「さあ」  祐介は興味なさそうにスマホをいじる。俺はおや、と違和感を感じた。女子のこととなるとすぐ話にのってくる奴が珍しい。 「お前、年上好きじゃなかったっけ」 「馨、お前俺をなんだと思ってんの」 「ナンパ野郎」 「ちげーよ、俺は色んな人と話したいだけ。そんな節操なしじゃねーよ」  祐介が苦笑しながらスマホをカバンの中にしまい、俺が出したコーヒーを啜った。 「しかも相手いそうな人ならなおさら」 「は?」  何言ってんだこいつ、というトーンで聞き返すと祐介がカップの中身を見つめながら言った。 「あの人、相手いるだろ。俺、負け戦はしない主義」 「いや知らないけど」  こいつの思考回路は長い付き合いの俺にもよく分からない。でもこいつは色恋事に関しては昔からなにかと鋭い。俺と聡美との件もこいつは真っ先に気づいた。誰にもバレないと思っていたのに。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

557人が本棚に入れています
本棚に追加