カモミールとリンゴ

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「えーと……分かりました」  とりあえず写真を撮ればいいのか。そう軽い気持ちで俺はスマホを受け取る。彼女はパソコンを起動させ、キーボードに手を乗せて画面を真剣に見つめた。 「撮ります」 彼女は首だけでこくんと頷いた。モデルを撮影するカメラマンってこんな感じなのだろうか、と思いながら俺はスマホのカメラボタンを押した。 「こんな感じで大丈夫ですか」  スマホを返すと、彼女は目を丸くした。 「すごい、上手ですね……」 「よかったです。では」  撮り直せと言われなかったことに俺はほっとして、「ではご注文お決まり次第、またお呼びください」と定型文言を繰り返してカウンターに戻る。 「捕まってたなだいぶ、おつかれ」 「ああ、なんかパソコンいじってるところの写真撮ってくれって」  祐介がコーヒーを一度に飲み干す。 「ああ、ブログあたりにでも使うんだろうな」  ご馳走さま、俺もバイト行くわと祐介がすっと立ち上がった。
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