557人が本棚に入れています
本棚に追加
「えーと……分かりました」
とりあえず写真を撮ればいいのか。そう軽い気持ちで俺はスマホを受け取る。彼女はパソコンを起動させ、キーボードに手を乗せて画面を真剣に見つめた。
「撮ります」
彼女は首だけでこくんと頷いた。モデルを撮影するカメラマンってこんな感じなのだろうか、と思いながら俺はスマホのカメラボタンを押した。
「こんな感じで大丈夫ですか」
スマホを返すと、彼女は目を丸くした。
「すごい、上手ですね……」
「よかったです。では」
撮り直せと言われなかったことに俺はほっとして、「ではご注文お決まり次第、またお呼びください」と定型文言を繰り返してカウンターに戻る。
「捕まってたなだいぶ、おつかれ」
「ああ、なんかパソコンいじってるところの写真撮ってくれって」
祐介がコーヒーを一度に飲み干す。
「ああ、ブログあたりにでも使うんだろうな」
ご馳走さま、俺もバイト行くわと祐介がすっと立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!