カモミールとリンゴ

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「ブログ?」 「あーそっか、お前そういうの興味なさそうだもんな昔から」  観月さんが俺たちの背後であの女子大生のオーダーを取っているのをちらりと見やって、祐介は声を潜めて俺に囁いた。 「日高真波(ひだかまなみ)先輩。今確か三年生で、今年のうちの大学のミスコン出場者」  ミスコン。俺たちの大学では毎年秋に行われる学園祭で男女それぞれ6人ずつ、選抜されたファイナリストが活動を行い、ネット投票や会場投票などを通じてミスター・ミス各一名ずつがグランプリとして学園祭当日選ばれる――それくらいは俺も知っている。  特にうちの大学は一応私立でトップを争う偏差値だったりするので、ミスコンは女性タレントや女子アナウンサーへの登竜門ともなっているはずだ。 「なるほど」 「……まじで興味なさそうだな」  苦笑しながら祐介が歩き出す。ありがとうございました、と声をかけると奴は振り返らず手だけひらひらと振って、出ていった。
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