カモミールとリンゴ

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「馨くん、だっけ。同じ大学だったのね」 「そうみたいですね」  まさかこんな次の日に、しかも大学でまた会うとは。あの喫茶店は大学にそこそこ近いものの、俺たちの大学はマンモス校だ。大学で会うことはほぼないだろうと高をくくっていた。  しかもほぼ初対面なのにファーストネーム呼び。さすがキラキラリア充組は距離の詰め方がこなれている、と俺はつい思ってしまった。 「お知り合いだったんですか、祐介と」 「共通の知り合いがいて。俺の予備校バイト先の先輩の友達」  心なしか祐介にいつもの愛想のよさがない。いつもはへらへらとしていて、良くも悪くも底抜けに明るい奴なのに。 「優美に感謝ね。今度お礼しとこうっと」 「ほんとびっくりしましたよ、昨日バイトいったらいきなり優美さんに頼まれて。……優美さんに頼まれちゃ、断れませんよ」  どうやら話から察するに、祐介のバイト先の先輩であり日高先輩の友人である『優美さん』から祐介が、俺と日高先輩の橋渡しを頼まれたらしい。つくづく世間は狭い。 「喫茶店で俺たちが話してたの見てたらしくて」  ほんとすまん、と祐介が俺を拝む。
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