カモミールとリンゴ

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 納得しかけて、俺は違和感を感じた。 「でも店名書いてないですよね、これ。なんでこの喫茶店て分かるんでしょうか」 「今はなんでも特定される時代だからねえ。大学近くの喫茶店で絞り込めば分かるし」  なんて時代だ、と舌を巻いた俺の目に彼女のブログのコメント欄が入り込んでくる。 『素敵な喫茶店ですね……!』 『この喫茶店、名前は何て言うんですか?』  そういった質問がたくさん来ている。その下に返信の形でまたコメントがついている。 『カフェ・メープルって喫茶店だと思います、HPもあります』  そのコメント返信は、日高先輩のものではなかった。大分多くの人が見に来ているのだろう、その中で分かる人が書き込んだ様子だった。 「え、この店HPあったんですか」 「あるわよー」  あっさりと言って観月さんがハーブティーの準備を始めた。香りからしてどうやらオレンジピールティーだ、とあたりをつけながら俺はHPのURLに飛ぶ。  俺の横で観月さんが耐熱ガラスのクリアポットに入った茶葉の上に熱湯を注ぎ、蓋をして蒸らし始めた。
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