カモミールとリンゴ

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「……あの、観月さん」 「はーい?」  しれっと答える観月さんに俺はため息をついて応える。 「……聞いてないんですが」 「だって言ったら怒るかなって」 「いや怒りませんけど、いつの間に」  HPは企業のものかと目を疑うほど凝っていた。店の外観から内装まで綺麗に写真配置されていて、ちゃっかり日替わりのメニューもきちんと毎日更新されるようになっている。  俺にとって問題だったのは、店の紹介のすぐ下にある文言だった。 『ほっと一息ついでにあなたにぴったりの花言葉、見つけませんか? 花に詳しいスタッフがおりますので、興味がおありの方、ぜひお声かけ下さい』  綺麗なフォントの斜め文字でそんなうたい文句がある。 「なんですかこれは」  ここは花屋じゃないんだぞと言いたくなる。いつのまにこの人は、と思いながら俺は合点がいった。 「……ああ、クローバーのお爺さんこれ見たのか」 「正解! それ見てきてくれたのよ」
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