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その次の日、俺のスマホに真波先輩からメッセージが届いた。内容は『写真は大学ではなくカフェ・メープルとその周辺で撮りたい』というものだった。
なんだか振り回されている気もするが、念のため観月さんに恐る恐る伝えるとそれも快諾された。
だから今、俺はバイトのシフトでもない日に一眼レフを持ってバイト先の喫茶店で真波先輩と向き合っている。
「へえ、一眼レフなんて持ってるんだ」
「……父の影響で、ちょっと」
肩をすくめながら俺は答える。どうせなら一眼レフの方が画質がいいし、ブログやSNSに上げたときに解像度も落ちにくい。それに俺はスマホの写真より、一眼レフのカメラの方が手にしっくりくる。そんな理由から持ち出してきたのだが、真波先輩は目に見えて喜んだ。
「すごい本格的! ありがとう!」
いつもみたいにお手本みたいな笑顔じゃなくてそんな自然な笑顔ならいいのに、そう思ったことは秘密だ。
「じゃあ早速お願いしたいんだけど、今日は河原でも撮ってもらいたくて」
いいかな……? と言われて、俺は無言で頷いた。一回引き受けたからには仕方ない。なかなか機会があることではないし、とことん付き合おうと俺は自分を納得させた。
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