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「……写真……」
軽やかに風に髪をなびかせながら、ココネさんが俺と先輩の手元を見て呟く。
「あ、いや、これは頼まれてて写真撮ってて」
立ち上がりながら言うと、ココネさんは不思議そうに首を傾げた。そしてにっこりと微笑む。
あれ俺別に弁解する必要なくないか、なんで焦ってるんだろ。そう思ったのと同時に彼女が追い討ちのように言った。
「? どこで何しても、石蕗さんの自由じゃないですか」
ごもっとも、としか言いようがない。
「……そうですね……」
ココネさんは敬語の俺にも何も言わず、「じゃあまた」と言ってすたすたとカフェ・メープルの方に歩いて行った。
そんな彼女の背中を見送ってからベンチに戻ろうとすると、真波先輩がすぐ後ろに立っていた。気配に気づかなかった俺はびっくりして立ち止まる。
「今の子、仲いいの?」
「……分かんないです」
さっきも名字呼びだったし、明らかにこっちに興味がなさそうだし。そう思いながらちょっと心が痛む。
「ふーん」
先輩は興味なさそうな返答をしながら、ココネさんが歩いて行った方向を見つめた。
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