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「……馨くんはさ」
「はい?」
ベンチに座り直してしばらく画像データを眺め直し、写真を選びながら彼女はぽつりと言った。
「写真、彼氏に撮ってもらわないのかって聞かないね」
「彼氏いるんですか」
その可能性を全く考慮してなかった。そういえばもし先輩に相手がいたら、なんだかそのお相手に申し訳ない。俺がカメラマンだなんて。
「いないけどさ」
君ほんとに私に興味ないのね、いっそ清々しいわと笑われた。笑われるのは癪だけれど、実際そこまで興味がなかったからそこまで考えてなかったわけで、否定できない。
先輩がそんな俺を見て、またくすりと笑う。
「てことで、これからも気兼ねなく写真撮ってね」
まだ続くのか、と思いながら俺は苦笑する。まだまだ先は長そうだ。
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