ホットココアさんとホトトギス

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 俺たちが大学に入って2年目の今年、聡美にはつい5ヶ月ほど前に彼氏ができた。俺と聡美はいわゆる腐れ縁というやつで、小学校から大学までずっと進路が一緒だった。平ったくいうと幼馴染という分類にも入るかもしれない。  普通、女子が好きな少女漫画というと幼馴染との間に恋心が芽生えて、すったもんだの後いつしか好き合うようになってハッピーエンド、なんて話がよくある。それを期待しなかったわけじゃないけど、どうやら淡い恋心を抱いていたのは俺だけだったようで、聡美は俺の友達と中学に入っていきなり付き合い始めた。 「彼氏できた!」  と無邪気にわざわざ報告までして。現実はいつだって、甘くない。  正直、そんな報告はいらないしこれは何の試練なんだとも思った。でもそれくらい、聡美の目に俺のことは恋愛対象として映っていなかったということだろう。  ともかく恋愛対象には十何年間一回も入れないまま、大学に入ってからも聡美には新しく彼氏ができて、それは俺じゃなかったということだけが今の事実だ。それがさっきのお揃い腕時計の彼だということも。
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