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仲いいとかそういう間柄ではなく、俺は完全に彼女のボランティアに奔走しているだけだ。説明しようと口を開きかけたときだった。
「君、噂になってるよ」
「……は?」
なんの噂だ、と顔をしかめるとご丁寧に彼は教えてくれた。
「この前八号館のラウンジで一緒にいて仲よさそうに喋ってたって」
先輩が俺にカメラマンになってくれと頼んだ時だ。あの時周りから視線がちらちらと来ていたのは感じていたが、俺たちがあの場所で会話をしたのはたった10分程度。その短い間でさえも噂になってしまうくらい、先輩の影響力はすごいらしい。
「ねえ仲いいならさ、今度紹介してよ俺喋ってみたいんだよねー」
茶髪くんが俺が座っている席の端に腰掛けながら軽く言う。俺のイライラは頂点に達しそうだった。別にそこまで仲良くもないし、そもそもほとんど喋ったことのない人間になぜ頼み事から会話を始めようとするのか、まったくもって理解できない。
「俺別にそこまで仲良くないし、あの先輩と」
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