カモミールとリンゴ

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「――お前な、笑顔でキレるのやめろ。むちゃくちゃ怖いから」 「じゃあ真顔のほうがいい?」  カフェ・メープルに向かう道すがら、祐介に問われて俺は奴が真顔のまま相手を理詰めする様子を想像してみた。 「どっちも嫌だ」  祐介は普段のらりくらりとなんでもすり抜けてやり過ごすが、ごくたまに引き金を引かれるとこうなることがある。笑顔のまま、それはもう相手が可哀想になるくらい理詰めで追いつめるのだ。実は見かけによらずこいつは頭の回転が速いから、そうなったらもう誰の手にも負えなくなる。 「……悪かったよ、巻き込んで」 でも俺ああいうのほんと嫌いでさ。そう言いながら祐介が大きく伸びをする。 「俺たちそんな噂になってんの?」 自分の預かり知らぬところで話が拡散されているというのは、あんまり気持ちのいいものではない。知らない間に自分の写真が撮られて拡散されているのなら、なおのこと。 「知らないならわざわざ言う必要も無いかなって黙ってたんだけどさ、お前ネット見ねえし。……今あの人の周り、大変なんだよ」
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