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「……まさにミスコンか」
祐介がコーヒーをぐっと傾ける。どうやらコーヒーはお気に召したらしく、一瞬で奴はコーヒーカップを空にしてしまった。
「まあ、そういうこと。でもその話からリンゴの花言葉の一つには『最も美しい人へ』って花言葉がある」
「それを本人に言って励まそうってことか?」
祐介がぴゅうと口笛を鳴らす。そんな歯が浮くようなセリフ俺が言えるわけないだろ、とため息をつくと「だろうな」という返答がボールを打ち返すよりも早い速度で返ってきた。
分かってんなら聞くなよな。そうぼやいて厨房に向かいつつ、冷蔵庫から取り出したばかりのリンゴを手に取る。ずっしりとした実の詰まった感触が手に広がった。
蜜のぎっしりつまったリンゴを縦半分に切り、皮をむいてスプーンで芯を取っていく。
ステンレスの鍋に、甘口の白ワイン、グラニュー糖、ハチミツ、シナモンスティックを入れて強火にかける。そして煮立った頃合いにリンゴを入れ、20分ほどじっくり煮る。
簡略化されたレシピだが、これだけでも格段に美味しくなる。リンゴの持つポテンシャルは高い。
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