カモミールとリンゴ

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「……なんだか優しい味がする。ちょっぴり甘いのね、美味しい。それにこの香りなんだか嗅いだことある気がする。なんだっけ……」  先輩がカップを手にくるみながらぼそりと呟いた。 「カモミールティーです。カモミールはマーガレットに似た白と黄色の花で、ハーブやアロマの定番なんですが、ハーブティーにすると飲みやすい優しい味になります。別名『マザーズハーブ』――『母の薬草』と言って、世界最古のハーブと言われています」  不眠症の改善やリラックスにも効果があるんですよと付け足すと彼女は一杯目のハーブティーをみるみるうちに飲み干した。 「――もう一つ」  俺は二杯目のハーブティーを淹れながら、真波先輩に向かって改めて口を開く。 「カモミールの花言葉は、『苦難の中の力』と『逆境に耐える』なんです」 「苦難の中の力……」  先輩がハーブティーに口をつけながら繰り返した。コトバがどうか伝わっていますようにと願いながら、俺は続ける。口下手な俺には、こういうことしかできない。 「カモミールは見た目は愛らしい花なんですが、地面を這うように生えて、踏まれれば踏まれるほど丈夫になっていくことからそんな花言葉がついたそうです」  さらに最後にもう一つ、と俺はカウンターの方へ体を向けながら言った。 「そのハーブティー、何の匂いに似ているか分かりますか?」
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