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「匂い……なんだろう、フルーツみたいな……」
出かかってるけど分かんないや、と眉をひそめて考え込む先輩の前に、俺は冷やしておいた料理を置いた。
「あ、リンゴ。……リンゴね!」
「正解です」
リンゴのコンポートの皿を前に、ひらめいたと言わんばかりに先輩が顔を輝かせる。少しほっとしながら俺は続けた。
「実はカモミールの花はリンゴの果実に似た香り、とよく言われているんです。語源もギリシャ語で『地上の』を意味する『カマイ』と、リンゴという意味の『メーロン』っていう言葉からつけられた名前だったりします」
「そうなんだ、カモミール自体は聞いたことあるけど花言葉だとかそういうこととか、全然知らなかった……詳しいのね、意外だわ」
先輩の言葉に、俺は苦笑いをしてみせた。その言葉は昔から聞きなれている。
「よく言われます。……俺実は、花言葉とかその理由になった逸話とかを調べるのが好きで。だって面白いと思うんです、この花にこんな物語を考えつくんだとか、こんな意味を持たせて人に贈ったりするのか、とか。それ知ってから植物見直すとまた前とは変わって見えてくる世界が面白くて」
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