ホットココアさんとホトトギス

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 入ってきたばかりの足元に茶色のラグがあり、「CaFe Marple」と白抜き文字の筆記体でデザインされた店名が目に入る。  窓は等間隔でステンドグラスと大きめの通常の窓が交互に並ぶ。その窓際には飴色のソファー席が窓ごとに4つ。中ほどに入ると木製の柔らかい色合いの椅子とテーブルが4つほど。カウンターは6席ほどだろうか。全体的に少しこじんまりとしたアットホームさを感じさせる雰囲気を醸し出している。天井からは柔らかく室内を明るく照らす白い貝細工のシェードランプ。床の木材が店内の雰囲気を柔らかくしていた。  入ったとき、ここは当たりかもしれない、という直感が頭をよぎった。こんなところで働けたら幸せだろうな、とすっと思えたのだ。  喫茶店の中に入ると、カウンターの中に一人、店員らしき女性がいた。その小さな顔にかけるには少しだけ大きすぎるサイズの黒縁メガネをかけている。髪型は頭の高い位置で綺麗に結ったポニーテール。それはゆらゆらと黒髪が光を吸い込んだように艶めいてなびく。歳は三十手前くらいだろうか、と俺は勝手ながらあたりをつけた。  背筋をぴっと伸ばしたその女性は、俺がドアをあけるとにこりと微笑んだ。どうぞお好きな席に、と促されて俺はカウンターに座った。
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