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彼女がいるカウンターの後ろ側の壁には「Let’s take a break.」と書かれたコーヒーカップのイラストがかかっている。
「……あの、バイトって募集してたり、しますか。ここ」
バイトは今、家庭教師とファミレスのホール。でもちょうどファミレスのホールの方は、毎回決まったマニュアルと一辺倒のメニュー作りのベルトコンベアに載せられている気がして、あまり好きではなかった。もしここで働けるならこっちがいい、と俺は直感的に判断した。
そのくらい、この喫茶店は居心地がいい。
「お、君バイト志望!?」
カウンターの中の女性は目をらんらんと輝かせながらカウンターから身を乗り出さんばかりの勢いだ。その威勢のよさに押されて、俺は思わずのけぞった。
「え、ええと、もし働けたらな、ってちょっと思って。募集要項とか、ありますか」
「なるほど。君大学生?」
彼女が眼鏡を少し押し上げながら俺に尋ねる。やっぱり眼鏡のサイズは本人にとっても大きいようだ。そんなどうでもいいことを頭の片隅で考えながら俺は頷き、自分の大学名を名乗った。
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