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この近くの大学でもあるということもあってか、彼女はすんなりとまた「なるほどなるほど」と言って頷く。
「どうして入りたいと思ったの?」
「バイトそろそろ替えたいなと思ってちょうど探していて。それと、あの……店名とお店の雰囲気、いいなって思って……」
いきなり質問内容が面接のような内容にシフトしている。彼女のぐいぐいくる矢継ぎ早の問いかけに、俺は特に何も考えずにバカ正直に答えてしまった。
「うんオッケー採用!」
「は?」
俺、募集要項くれって言ったよな? これもう面接なの? ていうかそんな簡単に採用していいのか、履歴書すら見せてないぞ俺、そんなことをぐるぐる考えているうちにその女性はにこやかに頷いた。
「大丈夫、私見る目だけはあるから」
君なら大歓迎よ、とお姉さんはカウンターの方に戻って水をグラスに注いでくれる。バイト決定の記念にコーヒーはいかがですかと微笑まれて、俺はメニューも見ていないのにお願いしますと頷いた。完全に彼女のペースにはまってしまっている。
サイフォンでコーヒーを用意してくれようとしている彼女の動作を見守りながら、俺は黙ってグラスの水を一口飲んだ。
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