ホットココアさんとホトトギス

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 それから約半年。ホットココアさんは俺がバイトの時に把握できるだけでも、毎回来ている。最近の高校生はお金に余裕のある生徒が多いのだろうか。この喫茶店のココアは普通のチェーンカフェMサイズくらいの大きさで一杯300円。安くはない。  彼女は今日も、同じくらいの時間に同じようにカランコロンとドアを開け、いつものソファーをちらりと見る。俺は「いらっしゃいませ」と言いながら彼女を席に案内した。  いつもと同じ動き。でもなんだか今日は彼女を案内しながら、視界の隅で何かが引っかかった。それを考える間もなく、慣れた動作で彼女はいつもと同じように顔を上げる。 「ホットココア、お願いします」  かしこまりました、と言って俺は観月さんに向かって頷く。彼女はカウンターの向こう側で親指を立てて了解、とサインを出した。  そして今日出てくるココアは、いつもとはちょっとだけ、違っていた。 「これ、店長からのサービスです、もしよろしければ」  いつものココアの隣に、大粒のマシュマロが三つ入ったガラスの皿を置いた。彼女はぱっと顔を上げて俺の顔を見る。その時俺は、はじめてホットココアさんの目を真正面から見た。よくよく見ると彼女の目は少し猫目で大きいながらもきりっとした目元をしている。近くで見てもやはり美少女だった。
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