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思わずまじまじと見てしまう。でもそれは彼女の顔の綺麗さにではなくて、彼女の目の色に一瞬注意を奪われたからだった。一瞬、彼女の黒く大きな瞳の中に深いエメラルドグリーンの色が走ったのを見た気がしたからだ。
まるで黒猫みたいだ、と直感的に俺は思った。
「え、あの」
彼女は戸惑ったようにその目を宙に泳がせた。さっき見たエメラルドの光は幻だったのか、すっかり純粋な綺麗な黒目に戻っている。 あまりの戸惑いように、俺まで戸惑いが伝染する。
「あの、苦手でしたか……?」
「いえ、マシュマロ好きです。ありがとうございます」
彼女がぺこりと頭を下げた。
「いえいえごゆっくり。ココアの中に入れても美味しいのでぜひ」
そう付け足しながら、俺もつられて頭を下げる。
カウンターに戻って機材を流しに置きながらそっと伺う。彼女は恐る恐る猫が見たこともないものに触るような様子で、そっとマシュマロをココアの中に投入するところだった。
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