ホットココアさんとホトトギス

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樹里(じゅり)、もう諦めよ。明日早く来て戻しとこ」 「でもまさかあのまま帰っちゃうなんて」 ため息をつきながら、樹里と呼ばれた真ん中の黒髪ロングの女の子がビニール袋をかさりと揺らす。その中の影を見て取って、俺はおや、と思った。 「変わった子だよねえ、ほんとに。いっつもぼやっとしてるし」 「変わってるといえばこの前思ったんだけどさ、あの子カラコンつけてない? よく見ると目が緑に見えんの。確かにうちの高校校則ほとんどないけどさぁ」 「うわー、まじか。なに考えてんのかよく分かんないね」 樹里さんとやらと一緒の二人の会話がここまで届く。緑の目、というところとホットココアさんの行動で俺の頭の中の回路がなんとなく繋がる。やはりさっきのは錯覚ではなかったらしい。 「どうも、いらっしゃいませ」  祐介がにこやかに笑顔を浮かべ、3人に向かってぺこりと頭を下げる。 「お前店員じゃないだろ」 「まあまあ、固いこと言わないの。俺とお前の仲だろ?」 「どんな仲だよ……」 「お知り合いなんですか?」  彼女たちは人なつこいタイプなのか、俺と祐介の会話に加わってきた上にカウンターの席に座った。  俺の隣の影が、ますます身を縮こまらせる。
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