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事情は全く分からないが、とりあえずこの状況は困った。俺が助けを求めるように祐介をちらりと見ると、祐介が意味ありげににやりと笑う。
――嫌な予感がした。
「俺とこいつ、高校からの友人でさ。大学も今同じ」
「へええ、そうなんですか」
「実はこいつ、面白い趣味っていうか特技があってさ」
やっぱりきやがった。
沸騰し始めたサイフォンの湯を見つめながら、俺は心の中で舌打ちをする。
「そんなお兄さんの話、聞いてみたくない?」
祐介が綺麗にウインクをする。こいつのこういうところに免疫がない奴は皆、はっと息を飲むほど蠱惑的な表情。彼女たちはこくこくと頷いた。
多分こいつの言うことなら誰でも大抵聞いてしまう。そんな魅力がこいつにはあるのだ、憎たらしいことに。
実に厄介だと俺は祐介を睨む。奴はどこ吹く風で『なんとか頼む』と口パクをしてみせている。
助けを求めるように観月さんを見ると、彼女も口パクで『グッドラック!』と言いながら親指をグッと立てた。
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