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完全に彼女たちの姿が見えなくなってから、俺たち4人はふうっと息をついた。
「……あのねえ、君たち」
観月さんが眼鏡を押し上げる。俺たちは言われる前に二人ともがばっと頭を下げた。
「ほんと、すみませんでした!」この時ばかりは言葉がユニゾンする。
「……どうして謝るの」予想に反して柔らかな声だ。
「いや、もし俺たち見当違いなこと言ってたらどうしようって」
「見当違いじゃ、ありません」
凛とした声がそこに響く。俺たちは今度はがばりとホットココアさんの方を向いた。
「あの、ありがとうございました。あの靴私のなんです」
詳しく話を始めようとする彼女に向かって、俺は内心ほっとしながらちょっと待ってと手ぶりでストップをかける。
「ココア淹れなおしました。コーヒーも出来上がりましたし、一緒に休みませんか?」
目の前には出来上がったホットココアと、コーヒー三人分が入ったドリップポット。店内には俺たち4人以外、お客はいない。
「……そういえばあの子たち、注文もしてなかったわね。……全く君ってやつは」
観月さんが「私の目に狂いはなかったわ」と言って俺に笑いかけた。
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