ホットココアさんとホトトギス

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 俺たちはいつものホットココアさんが座っているソファ席に座る。ちょうど4人掛けだ。  ホットココアさんは律儀に冷め切ったマシュマロココアを飲み切る。「ありがとうございます」と言いながら、彼女は新しいマグカップを手で包み込んでぽつぽつと喋った。 「今、学校で『記憶力試験ゲーム』っていう、下駄箱のローファー入れ替えるいたずらが流行ってて。ほら、ローファーって見分けにくいじゃないですか」 「そりゃまたえげつないゲーム考えんな」  苦笑しながらコーヒーを啜る祐介に、ホットココアさんが控えめに頷いた。 「まあ仕掛けた本人たちが自分のローファーと相手のものを入れ替えて、相手が間違えて気づかず履きそうになってたら「引っかかった!」って出てって返してくれるんですけど、面倒くさいじゃないですかそういうの」 「そうね」  観月さんがため息をつきながら同意する。 「私、普段ぼうっとしてるから割とターゲットになりがちなんですけど。やめてほしいって言ってもやめてくれなくて」  反応が面白いんでしょうねと彼女は自嘲気味に呟く。 「今日は気づいたんです、先に。でもなんだかもう面倒くさくって。上履きもたまたまうちの高校はスニーカーみたいな形だしこのまま帰ってもいいやって、走って出てきちゃったんです」 「そしたら相手が追ってきたわけね」  ホットココアさんは頷き、ココアをぐっと一口飲んだ。そして口元をほころばせる。
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