ホットココアさんとホトトギス

37/45

557人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
「そうです、『実る確率が1%』。チョコ渡した女子もうろたえて走って逃げちゃったしなんつー振り方する奴なんだって思いましたよ、それがこいつの第一印象でした。そんで気になって話しかけたら、『そんなつもりなかった、結実率1%だからこそチョコって貴重だよね、くれて嬉しいって言うつもりだったのに』って真顔で言うんです。そんでこうも教えてくれました。なんだっけな、カカオの花言葉」 「花言葉は、『親切』と『片思い』」  早くさっさと切り上げようと俺は鋭く祐介の話に捕捉する。 「そうそう、それ。『義理チョコは『親切』でくれるもの、本命チョコは『片思い』って意味にもとれるから、ちゃんと実はバレンタインにチョコって意味があるんだよな』みたいなこと言ってて、めちゃくちゃなるほどって思ったんです。こいつやべーけど単に口下手なだけで、面白い奴だなって」 「もうやめてくれまじで、あの時はほんと恥知らずだったんだよ」  だから大学に入ってから誰にも言わなかったのにと肩を落とす俺の前で、ホットココアさんがマグカップを握ってぼそりと呟いた。 「花言葉は、『親切』」  そして俺の方を見て、今まで見たこともないような満面の笑みでにっこりと笑った。「本当ですね」
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

557人が本棚に入れています
本棚に追加