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「一文字違いか、惜しい」祐介が呟く。余計なことを、と俺は奴の肘をテーブルの下でどついた。
「今日もごちそうさまでした」
そう言って彼女は席を立つ。その動線を先回りして、俺はレジに会計を手際よく打ち込んでいった。
「300円になります」
何か言いたげな彼女の表情に、俺は付け足した。「さっきのおかわりはサービスです」
「あの」
彼女の目がまっすぐ俺に向く。
「本当にありがとうございました。私、石蕗さんの特技好きです。また教えて下さい花言葉」
「……どういたしまして?」
この癖を好きだと正面切って言われたのは初めてだった。そして、また教えてくれと言ってくれたのはこれで今まで生きてきた中で3人目。それに動揺して、語尾が疑問形になってしまう。
「俺でよければぜひ。……またいつでも来てください」
すっと頭を下げると、「また」と言ってホットココアさん――ココネさんがいつものようにぺこりと頭を下げてドアの向こう側へと出て行った。
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