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「……また、機会があれば」
俺がそう言って濁すと、観月さんは「機会なんてじゃんじゃんあるわよ」と意味深に笑った。
「そういえば、俺も観月さんに教えていただきたいことがあるんですが」
「何でしょう?」
彼女がくるりと振り返る。つやつやのポニーテールが風になびいた。
「なんであの子はいつも同じ席に座るんでしょうか。聞いたことありますか?」
観月さんがうーんと顎に手を当てて考える。そして同時に、別のお客がカランコロンとドアを開けた。買い物帰りの主婦のようだ。
「いらっしゃいませ」
「いつもの、お願い」
「ロイヤルミルクティーですね、かしこまりました」
どうやら常連客らしい。観月さんに目配せされて、俺は会話をひとまず隅に置き、お冷を新たな客の前に置いた。
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