ホットココアさんとホトトギス

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「さっきの答えだけど、あの子自身に聞いたことはないわ。私もさっき初めて喋ったもの」  カウンターに戻ると、観月さんはアッサムCTCの茶葉に沸騰したお湯を注ぎ、茶葉を開かせ始める。  そして、想像しかできないけど、と呟きながら手鍋でミルクと水を火にかけた。 「いつもの場所にいることって、なんだかほっとしたり、落ち着く作用があったりするじゃない?君たちも大学で自由席の講義でも同じ席に座りがちだったりするでしょう。なんだかそこって他の席に座ったときより、落ち着く気がしない?」  観月さんは開いていくロイヤルミルクティー用の茶葉を眺めながら、そっとそう答えた。  確かに、と俺と祐介は顔を見合わせる。講義でもなんとなく定位置みたいなものができて、そこに座れないとなんだかそわそわした気持ちになるのと似ているかもしれない、と思った。 それは「いつもいる場所が落ち着く」からだ。 「うちはチェーン店みたいに満席になったりもしないし、来る人も時間は結構バラバラ。その中で来てくれる人たちが落ち着ける場所が提供できているのなら、マスター冥利につきるじゃないの」と彼女は言った。
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