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「今来たお客様もそう、いつもこの時間くらいに買い物帰りにロイヤルミルクティー飲んで帰っていくの、それがなんだか習慣になって落ち着くって話してくれたわ」
茶葉が広がっていく。よし、と言いながら嬉しそうに観月さんは温めたミルクと水の中にそれを入れた。
なるほど、と思った。そして同時にあのホットココアさんにもこの場所がそうであってくれればいい、とも。
「だから、君にもそれを手伝って欲しいの。君みたいな子、待ってたのよ」
よろしくね、とロイヤルミルクティーの香りの向こう側で観月さんが大きいメガネ越しに微笑む。
「……俺でよければ」
俺は静かに頷く。祐介がそんな俺たちをみて満足そうに微笑み、伸びをした。
――ここが俺の、新しい居場所だ。
この時俺は、まだ気づいていなかった。ホットココアさんの行動の本当の理由、観月さんの意味ありげな言葉の意味に。
それが分かるのは、もう少し先のお話。
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