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「そうか、ならあまり意味がないか」
お爺さんは目に見えてがっかりしていた。参ったなと呟くその姿に、余計なことを喋ってしまったかもしれないと罪悪感が湧く。口の中の香ばしいはずのコーヒーの香りが、ちょっぴり苦くなった。
「あの、見当違いだったら申し訳ありませんが、ひょっとして何かにぴったりな花をお探しですか」
意味があるものでないといけない花。この人はきっと、それを探している。お爺さんはぱっと顔を上げて大きく頷いた。どうやらビンゴらしい。
「妻が入院してしまって、その見舞い花を探しているんだがなあ……」
選ぶ時になって、あいつが好きそうな花を何も知らないことに気づいたんだとお爺さんは寂しそうに呟いた。
「あいつは本と花が好きだったから、あいつの好きな本の題名の花を持っていけばいいかと思ってたんだが」
それでやっと話が繋がった、と合点しながらも俺は心の中でためらった。ひなげしの逸話と花言葉の問題があるからだ。
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