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俺はいつもそう、気づくのが遅い。
自分の好きなことの話となったら後の収束を考えずに喋ってしまう。今回もその典型的なパターンだ。
「それは助かる」
だから、てっきり最悪クレームが入るのではと思っていた俺はお爺さんの声の明るいトーンに驚いて顔を上げる。お爺さんは不快な顔をするどころか、ほっとした顔をしていた。
「お兄さんみたいなイマドキの若い男がこんな花に詳しいなんて思っとらんかった。花なんぞまったく分からんから、できれば教えてほしい」
「……かしこまりました、俺でよければ喜んで」
どうやら花の知識に関する信頼は得られたらしい、と心の中で俺は胸をなでおろす。
やりとりを黙って見守っていた観月さんが俺の肩を叩き、『グッジョブ』と口パクで微笑むのを俺はじとりと見返した。
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