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「見舞い花ですが、まず持って行ってはダメな花から教えますね。これ以外で考えましょう」
「分かった」
お爺さんが素直に頷く。間違いのないようにしなくては、と俺は記憶をしっかり頭の中で反芻する。
「ええと、まず菊・小菊は告別式を連想させて縁起が悪いのでダメ。椿も花が首から落ちるので縁起が悪いからダメ。バラなどの赤い花も、真っ赤な色が血を連想させて縁起が悪いからダメです」
指折りして思い出しながら解説していると、お爺さんの頭の向こう側にやたらちらちらとこちらに視線を向ける小さな頭が目に入った。視線がぶつかり合ってココネさんが首をすくめる。
目を合わせながら「こっち、来ます?」と口パクとジェスチャーで首を傾げてみせると彼女は10秒ほどためらったのち、コクコクと頷いた。
どうやら話に入りたいらしい。
いつもその場から動かない、話さない、行動パターンがいつも一緒のはずのココネさんが、今日に限っては行動が珍しい。
「あの、お客様。先ほどの女の子にも意見いただくのはどうでしょう? 僕も女性が好きそうな花というといささか判断が怪しいですし」
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