パンとクローバー

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「そりゃ助かるが、いいのかい?」  お爺さんが後ろを振り返ってココネさんに尋ねる。ココネさんはぱあっと顔を輝かせて頷き、お爺さんの向かい側、俺の隣に移動してきた。 「あの、あと見舞い花にしちゃいけないのって、百合とかですよね。確か鉢植えも」  遠慮がちに彼女が口を開く。どうやら先ほどまでの会話は全て聞いていたらしい。 「そう、百合の花は匂いが独特で強い。あと花粉が取れないんです。鉢植えは根付いてるから、『寝付く』……寝たきりの意味を連想させるからダメなんです。よくご存知で」 「……昔、聞いたことがあって」  おずおずとココネさんが呟く。この年頃で見舞い花について知っているとは。思わず感心しながら、そんな自分に誰目線だと心の中で俺はツッコミを入れた。 「ううむ、なるほど。単に見舞い花と一口で言っても、花には色んな意味があるんだな。こりゃ骨が折れる」  お兄さんとお嬢ちゃんがいて助かったよ、とお爺さんが頭をかく。俺とココネさんは顔を見合わせてお互いに微笑んだ。
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