パンとクローバー

15/52

557人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
「で、どうしたんあれ。珍しい組み合わせだな」  結局見舞い花は一日では決まらず、お爺さんはまた相談に来た。ココネさんもいつものように喫茶店に来ていたから、そのままの流れでまた3人で相談することになったのだ。 「あのお客様の奥さんの見舞い花探し。まだなかなか悩んでて決まんないんだってさ」  コーヒーを淹れながら俺はカウンター席にいる祐介には目もくれずに答えた。まだサイフォンを使ったコーヒーの淹れ方には慣れない。この前及第点を観月さんからもらったものの、やっぱり味には多少のムラが出てきてしまう。  どうしてまだ半人前のそんな俺がカウンターで必死になっているかというと、観月さんが今日は疲れて見えるからだった。いつもと変わらず振る舞いは明るいが、明らかに目の下にクマができているし隣にいてもいつものように会話に突撃して来ない。 「で、馨が植物図鑑持ってきたの? あの分厚いやつ」 「見舞い花とかにちょうどよさそうな花のページに付箋して、いま二人に見てもらってる」 「ふうん。見舞い花とかって花屋で適当に見繕ってもらえそうなもんだけどな。あれ、でも確か……」 祐介が言葉を切って、ふと考え込んだ。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

557人が本棚に入れています
本棚に追加